Story1 夫編「幸せな若夫婦への突然の報せ」

妻と出会ったのは20年以上前になります。

僕がラグビー部の2年の時、彼女がマネージャーとして入部してきました。

後輩マネージャーの中では比較的仲良しだったけど、部活の時によく話すぐらいの普通の関係。

知り合ってから半年後ぐらいに文化祭(外語大のは結構有名)があり、部活のオフ期間でもあったので、カンボジア語専攻だった彼女はその期間を利用してカンボジアにホームステイに行きました。

毎日のように会っていたのに、2週間ぐらい会わなくなる。

話す事もできない状態でいたら、なんか猛烈に気になるようになって、、

親友に相談したら「そりゃ、恋だな」だって 笑。

そうして、彼女が帰国し部活に顔を出したその日を皮切りに、僕のしつこいぐらいの猛アタックが始まりました。

毎日の電話は当たり前、電話切った後に家に押しかけたり、今思えば半分ストーカーですね…。とにかくこちらから迫りまくってついに付き合ってもらえる事になりました。

あの突然の感情の盛り上がりはなんだったのか?今考えても不思議です。

僕の若気の至りが原因ですが、途中何回か途切れたりもあったけど、僕達は結局そのまま付き合い、僕が1年先に社会人になりました。

いきなり海外部門配属は正直予想外だったけど、まあ遅かれ早かれ海外の仕事はやりたかったし、仕事は毎日とても大変だったけど、新しい世界が広がってゆく毎日は辛さもありながらも充実感がありました。

ある日部長から「お前にはいい人はいるのか?」と尋ねられました。

「2年後には中国に行ってもらう事になる。いい人がいるなら、結婚するかしないか考えておけ」という話でした。

当時まだ22歳。結婚するイメージなど全くない。

男性ならみんなこの気持ちは分かってもらえるのではないでしょうか?

自分に自信がないとか、彼女がそれほど好きじゃないとか、そういう確たる理由があるわけではないのです。

ただ「まだ若いし結婚なんて早すぎる」と思っているだけ。

当時就職活動中だった彼女に、なんとなくその話をしてみたこともありました。

「私は昔からお母さんになるのが夢だった。就職活動止めてもいい」と言われ、、聞く相手が悪かった。肝のすわり方が違う。

考えに考えた挙句、決め手となったのは「この人とずっと一緒にいたい」という気持ちが強かったから。

僕の「結婚しようか」に、彼女が「結婚してください」。

そんな初々しい感じで、僕らの夫婦生活はスタートしました。

ある日、会社の代表電話に妻から電話が入りました(携帯は普及していない時代です)。

「赤ちゃんができたの!」と興奮気味に話す妻。

会社の電話だったし、上司もいるし、そこはサラリーマンとして平静を装いつつも、

内心「やったー!でかした!」という気持ちと、「おいおい、俺こんなに若いのにパパになっちゃうの?」という、嬉しさ8割、戸惑い2割ぐらいの気持ちで、その日はいそいそと家路につきました。

妻は子供を授かった事が本当に嬉しかったようで、お腹が大きくなってくると毎日愛おしそうに撫でながら、いつも嬉しそうに微笑んでいました。

そんな彼女を見ているだけで、こちらも自然と笑顔がこぼれる。

そんな普通の、幸せな若夫婦でした。

お腹の大きな妻と一緒に街に出掛ければ、見ず知らずのおばあちゃん達が寄ってきて「何ヶ月?」「男の子、女の子?」と満面の笑みで話しかけてくれます。

もうすぐ自分の分身が出来るという待ち遠しさと、周りの人みんなから祝福してもらうのがくすぐったいような幸せ感、本当にゆったりとした幸せな時間が流れていました。

産科の検診は最初のうちは順調でした。

3ヶ月ぐらいしたある日の検診、家に帰っていつものように「どうだった?」と聞くと、とても不安そうな表情で「赤ちゃんの頭が大きくなってないの…」と告げられました

最初は「ふーん、それって大変な事なの?」ぐらいに感じましたが、それから2週間後の検診でも、また頭だけが大きくなっていない。

産科の先生からは「障がいが残るかもしれない」と言われたそうです。

そんな時でも、新人なので有給を使う事も遠慮してしまう自分。

検診には義姉についていってもらったりしていました。

いよいよ状況が深刻になり、ある日の検診に僕も有給を取得し、付き添うことになりました。

「エコーを見る限り、脳が確認できません。水無脳症の可能性があります。」

水無脳症?何それ?なんでうちの子が?先生には聞けないし、自分に問いかけても虚しいだけ。

理由なんてなくて、ただそこにそういう現実だけがありました。

その日の帰り道。前を歩く妻の後ろ姿があまりにも不憫で、それに、自分自身もショックが大きくて、どう慰めれば良いかもわからず、夕暮れの道をとにかく二人、無言で歩いて帰りました。

 

 

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